MOT-Lab 気になる雑誌チェック 
MOT,技術の経営,イノベーションの戦略に関して気になる雑誌の最新号を紹介します 

2004年4月


ハーバードビジネスレビュー(日本語版) 2004年4月号 
メインの特集はリーダシップです。一番面白かったのが、”リーダシップの不条理”というINSEADのケッツ・ド・ブリース 先生へのインタビュー記事です。偉大なリーダの要素として、”人々がその人と一緒にいて気疲しないこと。その人の近くにいたいと感じること” を挙げており、先生はこれをテディベア的要素と命名しています。(いまだに若い人に接する度に、この言葉が脳裏をよぎります!) また、部下たちがリーダーを理想化して崇拝する現象が発生することがあり、その背景としてフロイトの転移の理論を紹介しています。 つまり、人間には幼少期の人間関係を現在の人間関係に反映させる性質があり、部下はリーダーを父親とみたててしまうことがある、というわけです。
特集以外で面白かったのは、ワールドコムを破産法で救うべきかというHBSのBower先生、Gilson先生の意見記事です。  ワールドコムが不正会計までやって低コストサービスを提供したため、競合他社はリストラを余儀なくされた。 そこまで業界に迷惑をかけたのに、今では破産法によって債務の金利に支払い義務がなくなり、リース契約の解約権利まで持つこととなり、 競合他社よりも優位な条件を得ている。正直者がバカを見るような状態は良くないので、 破産法の意義を尊重しながら不条理を解決していく必要がある。 という内容でした。

2004年2月


LOOP 2004年3月号 
メインの特集は”デジタル匠”ということで高い技術力によってハイテク機器の希少なEnablerとなっている国内の中堅企業を紹介しています。 特集の中では、これらのEnabler達と企業とを結ぶB2Bマーケットを提供する"試作ドットコム"というビジネスも紹介されています。

無料で全授業教材をインターネットで公開することを決めたMITの担当者へのインタビュー記事が掲載されています。  "カニバリ"(共食い)の問題について担当者は、オンラインがオンサイトの代替になることはないという主旨の発言をしています。 CC先生が指摘している通りイノベーションの初期で新技術を既存手段の代替となることはないのだから、"カニバリ"の心配は無用なんですよね。  MITのように新手段が"Not Good Enough"のうちに採用する姿勢を企業は学ぶ必要があると思いました。  ただし、やはり新手段が脅威に見えない段階での活動ゆえ、 組織内部の人間の参加モチベーションをどの程度得続けられるだろうか、という点は疑問に感じました。

外部研究機関を積極的に活用するインテルの研究部門のマネージメント手法の紹介記事が掲載されています。 昨年ぐらいに発表された話ですが、 "Lablet"(ラブレット)という小さな研究オフィスをいくつかの大学の周辺に設置しています。  また、5年以内の社内の商品化を目指すものは社内、それ以上長期的なものは外部との連携、という基準を持っているそうです。  日本の大企業もオープン体制による研究開発の枠組みを早期に実現していく必要があると思いました。   ソフトウエア開発の”オープンソースコミュニティ”への移行の流れも符合していると思います。

2004年1月


ハーバードビジネスレビュー(日本語版)2004年2月号   
メインの特集は P. コトラー のマーケティング論です。インタビュー記事と5本の論文とが掲載されています。

インタビュー記事では”横展開のマーケティング(Lateral Marketing)"という新し概念や 現代におけるソーシャルマーケティングの重要性が語られています。 Lateral Marketingはクリステンセンが 提唱している"non-consumption"という概念に符合するし、 ソーシャルマーケティングは"P2Pの著作権問題"のようにイノベーションがよく直面する課題なので、 MOTの観点からも非常に示唆に富んだ内容だと思います。

論文は、(1) 衰退期を迎えた商品の撤退戦略 (2) 単なるセールスでなく企業活動全体を先導するマーケタの役割の重要性  (3)マーケティングの各種判断における数学的最適化手法(OR)の活用法 (4)芸術とビジネスのコラボレーション  (5)一人勝ちでなく共存的一位を維持する"シェアマネジメント"の重要性 、を論じています。  特に(5)の問題はビルゲイツが昔から悩んでいる問題のような気がして、 オセロゲームのように僅差で勝つことが難しいITビジネスでのシェア戦略を整理していく必要があると思いました。

特集を読みながら自分なりに考察したことがたくさんあったのでMOT Reviewで述べたいと思います。

特集以外の記事では"3Dネゴシエーション"という論文に着目しました。 交渉の前の根回し、お膳立てが重要という当たり前の話なのですが、その手法を体系的に整理している点が面白いと思いました。


週間ダイヤモンド 1/24号  
市場成熟期を迎えた携帯電話業界のバリューチェーンダイナミクスの可能性が特集記事になっています。 まさにクリステンセンがInnovator's Solutionの5章で原理分析している現象です。 端末製造のセグメント内では既に起こっているのかもしれませんが、ネットワーク、オペレーション、販売まで含めた 全体のバリューチェーンで変化が起きるのかが要検証ですね。

LOOP 2004年2月号 
メインの特集はナノテクです。たしかに、コンピュータのメモリやモニタが超軽量・超低電力になったり、可能性の大きい分野だな、と実感しました。 このような要素技術で技術革新するためにどのようにバリューチェーンを構築していくかがMOT的観点では重要ですが、国内の推進協議会の発足の話などが紹介されています。

「ゲノム敗北の教訓」という記事では、ライフサイクルの短いITベンチャーと長期的にリスクを背負わなければいけないバイオベンチャーとの違いが論じられています。 また、SOHOで起業可能なITと異なり、創薬の過程で動物実験の設備(ウエットラボ)が必要となるので自社だけでは創薬を達成できないというバイオベンチャーの悩みも紹介されています。 [このあたりのバリューチェーンの構築を促進するしくみを作ることが国家的戦略になるのでしょうね。]


ハーバードビジネスレビュー(日本語版)2004年1月号 
メインの特集は"営業力のプロフェッショナル"ということで、セールスに関する話です。

PFドラッカー が1969年に執筆した "マネジメントの新たな役割" という論文が掲載されています。 そのなかで、これからは生産労働から知識労働が主になる、生産労働と異なり知識労働では労働と計画の分離はできない、労働者自らが計画を建てられることが重要になる、 という点や、変化はチャンスであるという姿勢を身につけ、イノベーションを継続的に生み出す組織が必要になるだろう、といった点を提起しています。

あと、 なぜプロジェクトの迷走を止められないのか "Why Bad Projects Are So Hard to Kill" という論文の日本語訳が掲載されています。 カリスマ的なリーダの言葉によって周囲の人間がプロジェクトの実現性を検証する姿勢を失い、集団信仰のようにプロジェクトが走ってしまう事例を紹介し、そのような事態を発生させないための策を提案しています。 [この種の組織ダイナミクスの現象論はよく語られており、MOT、ビジネスの分野に限らず重要な話だと思います]