6章: Open Innovation @ Intel
6章では、Open Innovation環境において大企業の中央研究所主導による半導体基礎技術の研究開発がだんだん困難になり、Intel自身が研究開発活動を支えていく必要に迫られていることを紹介しています。
さらに、Open Innovation環境における研究所運営のモデルとしてIntelのR&D活動を紹介しています。
Intel R&Dの歴史
- labレスの時代
もともとlab(研究開発部門)とfab(製造部門)とのギャップを解消するために、独立した研究所を持たずに、製造部門内に研究員を配置するのがIntelのinnovation philosophyだった。
"minimum information": 製造部門の観点から課題解決のために必要最低限の調査、研究を行う。 必要以上に深く研究を掘り下げない。
- copy exactly方針に基づく開発Labの設立
DRAM事業から撤退した時に一部のfabが余ったので、初めて独立の開発部門を持つことになった。
labとfabとのギャップが生じるのを避けるため、"copy exactly"という方針で運用した。つまり、製造部門の施設と全く同じ機械を同じ設定、配置で運用した。
- Intelが基盤的研究をしなくてすんだ理由=IBMとAT&TのR&Dのただ乗り
半導体業界の革新的研究はIBMとAT&Tによってリードされていた。 IBMとAT&Tの最先端の自社製品を開発する活動によって、上流のサプライヤも開発資金を得ていた。
上流のサプライヤにとっては開発投資をIBM,AT&T向けのビジネスだけでは回収できないために、IBM, AT&Tへ提供してから数ヵ月後にIntelなどの他の半導体メーカーにも販売した。
この結果、Intelはただ乗り的に最新の上流技術を数ヶ月遅れで調達することができた。
Intelの大成功によってIBM, AT&Tの研究開発資金が少なくなったので、もはやただ乗り的な活動はできなくなっており、Intel自らが基礎研究の活動をスポンサーすることが必要になっている。
現在のIntel のR&D
- 3つの研究所による運営
現在はR&Dを持っているが、中央研究所という形でなく3つの独立した研究所による分散モデルでR&D活動を行っている。3つの研究所は以下の通り、バリューチェーンの異なるポジションを担っている。
- Intel Architecture Lab (下流): Intelにとってはバリューチェーン下流のコンピュータ製品全体のソリューションを研究している。 コンピュータ製品全体のソリューションを発展させるために、他のベンダと連携した活動を行っている。
- Microprocessor Research Lab: 自社の事業に貢献することを目指した研究活動を行う。 従来の企業の中央研究所に相当。 ただし、この研究所の開発活動ですら、社外との連携を行っている。 例えば、Itaniumはhpと共同で開発された。
- Component Research Lab (上流): バリューチェーン上流の基盤技術、enabler技術の研究を行うために、大学やサプライヤなどと共同で研究開発を行う。 社外の技術を積極的に評価、吸収し、Intelの製品開発活動を支援することを目指している。 "The primary role of the Lab (CRL) is to link Intel with the outside research community" (CRL所長のコメント)
- 社外のInnovationへのアクセス方法
- 大学への資金援助。 単にお金を提供するだけでなく、Intelの研究者が大学院の学生と共同で研究を実施する。
"lablet": いろんな大学の周辺に小さい出張所を設置する
- Intel Capital: Intelが運用するVCファンド。 Intelにとってcomplementaryとなる企業を育成するための活動。 このVC活動を通じて、周辺市場のトレンドを学習している。 投資の際には、なにをIntelが与えて、投資先からなにを得るのか、成功とみなすための目標はなにか、を明確化し、投資目的に沿ったperformance criteriaを定義する。 周期的にperformance criteriaで達成度をはかり、投資を継続するか否かを判断する。