2章論旨:The Closed Innovatoin Paradigm
研究開発から事業化までをある企業内で閉じた活動として行うことをClosed Innovationと呼んでいます。
2章では、かつては大企業がClosed Innovationによって成功してきたけど、
成功するための環境条件としてどういう要素が重要であったのかを示しています。
そして、現代ではこれらの環境条件が崩壊していることを指摘しています。
Closed Innovationが成立するための条件
- 大企業のみが産業の知識を持つ人材を囲い込んでいる
- 市場は特定企業による独占・寡占状態にあり、企業は独占・寡占状態の市場のもとで時間をかけて各世代の技術への開発投資を回収できる
- もともと研究所によって開発された新技術をリスク回避志向の事業部門が導入するまでには期が熟すまでの時間が昼用である。
この間、企業が開発された技術を棚に温存できるためにも、市場は独占状態にある必要がある。
Closed Innovationが成功していた時代の社会状況(環境条件)
1980以前では以下の社会状況のもとで、上記の条件が成立していた。
- 大学は基礎研究に専念していた。 応用研究に力を注げば、基礎研究力が低下すると考えていた。
- 企業が生涯雇用のもとで優秀なエンジニアを囲い込んでいた
- このような状況で、事業化に必要な広範な技術開発を実施できるのは産業だけであり、市場は特定企業による独占・寡占状態となっていた。
環境条件の変化
現代は下記のように社会状況が変化しており、Closed Innovationの成功条件が崩壊している。
- エンジニアの流動性が高くなった。 (ノウハウ取得のための中途採用が増えた。)
- 1980年代からVCマーケットが活性化した。 これにより、新興企業が事業資金を得やすくなった。 また、ストックオプションなどで大企業の福利厚生よりも魅力的な条件がエンジニアに提示され、エンジニアがより流動的になった。
- 人材の流動化によって、サプライヤなどの大企業以外の規模の企業の技術力が向上した。これによって、自社がすべてを開発しなくてもサプライヤなどから必要な周辺技術を調達できるよになった。
- 大企業でなくても事業化ができる環境が整ったので、企業が開発された技術を棚に温存することはできなくなった。
2章考察: 業界による違いについて
The Closed Innovationの環境条件が崩壊しているか否かは業界によって違うでしょう。
成熟産業であれば、サプライヤの技術力も向上しており、
サプライヤの技術力を使った製品開発へかなり前から移行しているでしょう。
しかし、そのことによって、市場が寡占状態でなくなり、
大企業によるイノベーションのタイミングコントロールができなくなる業界は少ないと思います。
理由は、品質保証可能なプロダクトの製造管理をするノウハウ、ユーザをサポートする体制、
法律や業界で定められているさまざまな検査や認可手続きをクリアするためのノウハウ、
など、新規参入者には取得しずらい必要能力がたくさんあるからです。
このため、自動車業界にしろ家電業界にしろ、昔から同じメーカーが市場を支配していると思います。
つまり、これらの業界についてはこの本に書いてあるほどのパラダイムシフトが起きているわけではないと思います。
(ただし、サプライヤの技術への依存度が高まっている現象は多くの業界あるのかもしれません。)
IT業界はOpen Innovationが進んでいますが、むしろIT業界のような業界が特殊なのではないでしょうか。