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2005年05月22日

第7章 もの造りの力を利益に結びつけよ

日本のもの造り哲学 第7章のレビューです。 擦り合わせ、寄せ集めそれぞれの製品アーキテクチャにおいて利益率を高めるための課題を論じています

キーワード:
・アーキテクチャの両面戦略
・二つの戦略論: 組織能力派 と 位置取り派
・アーキテクチャの位置取り戦略
・中モジュラー・外インテグラル

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ポイント:
1. 統合的組織能力に優れている日本のもの造り産業は擦り合わせに強いのだが、だからといって得意な擦り合わせばかりを極めるのは良くない。 得意の擦り合わせを利益力に結びつける努力をすると同時に、苦手な組み合わせ型を克服するための組織能力構築をする必要がある。 これがアーキテクチャの両面戦略である。

2. 擦り合わせを利益力に結びつけるために、擦り合わせの良さを顧客に分からせること、それに見合った値段を設定すること、が必要。 これは、ブランディング、マーケティングの努力である。

3.  戦略論には、組織能力を鍛えることに主眼を置いた組織能力派と、儲かる場所・優位性を確保できる場所を探索する位置取り派とがある。 両方の戦略論が重要だが、企業に宿っている組織能力を軽視して位置取り先行の戦略を論じることはよくない。 そこで、現場の組織能力を活用しつつ位置取りを考えるアーキテクチャの位置取り戦略、を提案する。

4. アーキテクチャの位置取り戦略では、自社の顧客のシステム・製品のアーキテクチャ(外)と自社製品内部のアーキテクチャ(中)それぞれについて、インテグラル vs モジュラーの選択を考える。 下記のことが言える。

(1) 国内の多くの企業は外インテグラル・中インテグラルだけになってしまっている。 しかし、これでは利益率がでない。 外インテグラル・中インテグラルはもの造りの道場という位置づけで、この種のもの造りを継続しつつ、他のパターンを同時に採用しながら利益率を確保する努力が必要である。

(2) 中インテグラル・外モジュラーは利益率がでる形態の一つである。 しかし、この形態で成功するには業界トップになることが必要。

(3)中モジュラー・外インテグラルで利益を挙げることに成功している企業も多いが、高度な工夫が必要。 製品を共通部と顧客依存部に分けること、中インテグラル外モジュラーのレイヤーを内部に包含しながら中モジュラー・外インテグラルの製品を外部に見せること、出来上がり製品を「カスタム化された」と顧客に思わせる工夫、などが重要。

(4)中モジュラー・外モジュラーは最後までしぶとく生き残る体力がない限りやめた方がよい。

感想:
1. 藤本先生と同じように尊敬するクリステンセン先生が"Skating to Where Money Will Be"などの論文で、位置取り戦略を提唱しています。 その考え方はすごく参考になるのですが、アメリカのようにM&Aや中途採用などで企業(組織)そのものを流動的に変形できる国ならともかく、日本で同じ考え方を採用するのは難しい、と思っていました。 その意味で、アーキテクチャの位置取り戦略というのは、リーズナブルな気がしています。

CC流スケーティングに関する過去の私のエントリ

2. 日本の大手電機メーカーや通信キャリアのように、モジュラー産業で埋没している企業には「中モジュラー・外インテグラル」という位置取りが有効になるでしょう。 本にはでてきませんでしたが、IBMなどは中モジュラー・外インテグラルの代表的成功例ですね。

3. とはいえ、中モジュラー・外インテグラルという理想形態の難しさを多くのIT SIerが感じていることと思います。 顧客の要望を受け入れてばかりいれば、結局カスタマイズ部分が多くなってしまい、利益がでません。 「カスタマイズをしない」がコストを抑えるITプロジェクトマネジメントの勧めだったりするわけです。 その意味で、顧客に「カスタマイズしてくれた」と思わせる仕掛けが重要、というのは良くわかります。 

投稿者 motlab : 2005年05月22日 17:21

コメント

このエントリ深いですね。面白いです。

中モジュラー・外インテグラルとなると、業界トップ企業になってしまいますがソフト大手、マイクロソフトやSAPもそうですよね。

SAPなどパッケージソフトのプレイヤーがカスタマイズにどう応じているのかはひとつヒントのありようと思います。

投稿者 SW : 2005年05月29日 09:34