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2004年09月26日

7章:Creating New Ventures out of Internal Technologies

7章ではR&D成果を社外で事業化する活動の例としてLucentのNew Ventures Groupを紹介しています。

LucentのNVG(New Ventures Group)の概要

  • Bell研の成果をLucent社外で事業化する活動を行う
  • 2001年3月の時点ではNVGによる会社が26社存在していた

NVGの運用プロセス 

社内対立(成果を社外で事業化することに対する社内事業部門の反発)をマネージするプロセス

  • Step 1: NVGは周期的に研究者たちとミーティングを行い、新事業のネタを探す。
  • Step 2: NVGが新事業になりそうな研究成果をみつけたら、 その研究成果を新規事業化の候補とすることをルーセント社内で告知する。 ルーセントの事業部門が社内で当該研究成果を事業化したい場合にはその旨を意思表示できる。 告知に対して事業部門が意思表示できる期間は数ヶ月(もともと9ヶ月だったが現在は3ヶ月)である。
  • Step 3: 告知に対して事業部門の事業化意思が表明されなかった場合には、NVGが事業化の検討を開始する。 NVGは最終的な"exit"までの過程も含めてビジネスモデルを計画する。 exitはLucentの事業部門に吸収されるシナリオでも外部に売却するシナリオでもよい。
  • Step 4: NVGでも事業化困難と判断した場合には、研究成果をライセンシングして収入を得ることを考える。 (Lucentの2001年度のライセンス収入は440億円(440 million $) )

新規事業化におけるプロセス

市場の不確実性に対応するため、計画を数ステージに分けて、見極めポイントを定義している。
  1. initial evaluation phase: 600万円から1100万円の配算。 2~3ヶ月の活動。
  2. market qualification phase: 6000万円から1.1億円の配算。 3ヶ月から12ヶ月の活動。 ビジネスチームを編成する。 ビジネスプラン作成、プロダクト開発、ユーザテスト、トライアル、などが実施される。
  3. business commercialization phase: ビジネスプランが承認されて、このフェーズに移行する。 ベンチャーとしての体制を設立し、事業化を推進する。 かつてはLucentだけで資金割り当てしていたが、やがて社外のVC達からの資金も加えてベンチャーを設立するようになった。
  4. exit: ベンチャーのビジネスがうまくいったら、なんらかの形でcapitalizeする。 Lucentの事業部門に吸収させる、他社に売却する、株式会社化する、などが考えられる。

モチベーションの喚起とインセンティブの与え方

大企業のサラリーマン社員によるベンチャーにおける根本的な課題への対処。 つまり、新会社に出向しているLucent社員にアントレプレナーのようなモチベーションを喚起するためにどうしているか? 
  • 擬似的な"equity compensation"を実現している。 つまり会社の資本の一部を社員に分け与え、会社の価値があがれば社員の資産価値があがるようになっている。  ただし、本当のベンチャーほどハイリスク・ハイリターンではない。
  • リスクを認識させるため、ベンチャーを行う人間はストックオプション的なチャンスを得る代わりに、年収の10%から25%の相当するボーナスを放棄しなければいけない。  本当のベンチャーに身を投じるリスクに比べれば小さいが、本気で覚悟できていない研究員を排除するには十分な代償になっている。 (よく考えると、テレコム不況でLucentのマネージャは一時ゼロボーナスになったので、ボーナス放棄はたいした代償になっていなかった、というオチがある)

NVGの問題と結末 

NVGがもたらした問題

活動の正当性に対する疑問
活動を正当に評価することがむずかしい。NVGがなければ、本当に事業化できなかったのか?  NVGがあるのとないので、Lucentの事業がどう変わったのかを定量的に評価することが難しい。 つまり、Lucentにとっての戦略的メリットがみえない。 また、NVGによる新会社の市場評価がLucentの投資額よりも上回っているかに基づき財務的メリットを評価することは考えられる。  しかし、株式市場が低迷している現在では、財務的メリットで正当化することは難しい。
社内政治的混乱
  • あるR&D部隊がある技術を既存事業で事業化しようとしているときに、NVGが競合する新規事業を立ち上げることがある。
  • 研究成果を自主事業化しないと判断した事業部門マネージャがあとになってそれを誤りと認めなければいけなくなるような事態も発生し、NVGの活動が事業部門にとってやっかいな存在になった。 (例えば、NVGで成功した企業を買い戻す場合)
  • NVGの成功によって一部のマネージャが大金を手にした。 ちょうど、テレコム不況で一般のLucentマネージャがゼロボーナスだった時期なので、反感を買った。

NVGとLucentとの別離 

  • 結局、Lucentの経営自体がやばくなったこともあり、LucentはNVGのベンチャーの80%を外部投資会社 Coller Capitalに売却した。 Lucentが得た収入はおよそ110億円だった。
  • NVGのマネージャ達はColler Capitalに移り、NVP(New Venture Partners)という部門になっている。 NVPは今後もBell研と連携し、Bell研の成果の社外事業化を推進する予定。

考察:戦略ビジョンなき社内ベンチャー活動への警鐘 

たしか類似の過去の事例としてXeroxのNew Technology Ventures があったと思いますが、Xeroxの場合も長続きしませんでした。 

共通している問題点はNew Ventureの自社事業にとっての戦略意義を明確化せずに活動してしまったということではないかと思います。例えば、LucentのNVGの運用プロセスからも、事業部門が不要とみなした技術について開発投資を回収するという動機が感じられます。

自社の将来事業にとって重要な技術・市場であるが、既存事業部門では推進しずらいので、独立の組織によるベンチャーで開拓する」という戦略判断に基づいて、New Ventureを行うことが重要でしょう。

本章は「将来の事業戦略とは無関係にやみくもに新たな収益源を創ろうとする社内ベンチャー活動は長続きしない。」という警鐘を鳴らしていると思いました。

投稿者 motlab : 2004年09月26日 01:47

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