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2004年03月14日
4章: 対立への臨み方
4章はプラットフォームプロバイダが直面する外部プレーヤとの利害対立、社内における事業部間の利害対立への対処方法について、インテルの特徴を紹介しています。
周辺プレーヤとの利害対立
利害対立のパターン
周辺プレーヤ(complementor)との利害対立が発生する主なパターンは以下がある:- 時間感覚のずれ
- インテルが長期的な次世代技術の開発を周辺プレーヤも巻き込んで推進したい時に、周辺プレーヤが、人、金、時間に余裕が乏しいため、 短期的に投資効果が得られない次世代技術の開発に躊躇することがある。
- 路頭に迷わせてしまう
- インテルの戦略が変わってしまい、立ち上げるはずの市場がなくなり、インテルの方針に従ってきた周辺プレーヤが裏切られた思いをする (例: MPEGやDVDの市場をインテルは最初推進するつもりだったが、これらのコンテンツの処理に必要なCPU演算量が現在のCPU能力に比べて大きくなくなったので、インテルはMPEG, DVD市場を推進する活動をやめてしまった)
- 周辺市場での競合
- インテル自身が周辺プレーヤの市場でビジネスを行うことになり、周辺プレーヤのライバルとなる。(例:チップセット市場やマザーボード市場への進出など)
対処方針
ハイテク市場においては製品カテゴリ間の境界が常に流動的であり、周辺製品の提供者との対立は避けられない。 周辺プレーヤとの対立に関するインテルの取り組みの特徴として、以下が挙げられる:- 信頼を大事にする
- IALが業界における公平なリーダとして信頼されるために、 IALとインテル内の各製品事業部との間の独立性を高めている。 また、周辺プレーヤの財務上の健全性を保つために配慮する姿勢を怠らない。
- インテルのビジネス範囲を限定する
- これは全てのインテルマネージャに共有されているわけではないが、マイクロプロセッサの市場拡大こそが最終目的であり、周辺市場でビジネスをすることは目的ではない、と発言するマネージャもいる。 (この辺は内部対立の話にも関係)
- ひっそりと徐々に周辺プレーヤを巻き込む
- 新技術を推進する際に、早めの段階で周辺プレーヤにアプローチし、周辺プレーヤ自身の戦略を当該技術の方向性に反映させる機会を作ることにより、周辺プレーヤの賛同を確保していく
- インターフェース技術と実装技術とを分けながら、技術開示を行う
- 推進対象のインターフェースに関する技術の知的財産(IP)を開示する際には、当該技術がインターフェース技術か実装技術かに応じて方針を選択する。 インターフェースIP (当該インターフェース準拠の製品を実装するために必須の技術)については、広く開示する。 一方、実装IP (複数ありえる実装形態の一つにしかすぎない技術)については、インテルのプロダクト販売ビジネスの戦略も考慮して、慎重に開示方針を定める。 (つまり、あるインターフェースの市場の利益を特許戦略で独占しようという思想はない。 PCIバスを推進した際に、「インターフェースに関する基本特許でインテルが儲けようとしているのではない?」 と周辺プレーヤが疑念を持ったことがある。このような疑念が抱かれないように注意している。)
インテル内部における利害対立
利害対立のパターン
インテル内では、 Job-1 (=マイクロプロセッサ事業を拡大することを最終目的とする活動)と Job-2 (=新しい収益源として、マイクロプロセッサ周辺市場における事業を育成することを最終目的とする活動)とがあり、 しばしばJob-1のための活動がJob-2の活動と対立することがある。具体的にな対立のパターンとして以下がある。- 周辺プレーヤを支援する活動をするとき
- IALやPlatform Marketing Groupが、Job-1活動の一環で、開発キットの配布やノウハウ開示を周辺プレーヤに対して行う。 これらの活動が周辺製品市場においてインテル製品を販売するJob-2の活動と矛盾する。
- コア事業との関連性の低い新事業へ投資するとき
- 新しい収益源を育成する活動には上記のJob-2以外に、 Job-3 (将来の事業の柱となる可能性のある新規事業の育成)がある。 Job-1, Job-2, Job-3の間の力の配分に関して議論が生じることがある。
対処方針
これらの対立を解決しやすい企業文化を作るために、インテルは以下の原則を実践している:- 対立は不可避であるという認識を共有し、常に問題提起しやすい環境を作る
- プラットフォームビジネスの発展に必要な周辺技術の開発を常に周辺プレーヤがしてくれるとは限らない、また周辺プレーヤに対する強い交渉力を持つためにも、Job-2の活動は必要である。 つまり、基本的には周辺プレーヤと円滑にイノベーションを進めていくJob-1の活動を優先すべきであるが、Job-2の活動機会を確保しておくことも同時に重要である。 従って、対立を許容しながらJob-1、Job-2双方の活動を保たなければならない。
- 対立を解決するプロセスを確立する
- 対立が発生したら、即座に応急に解消するのでなく、幹部も交えたよりフォーマルなプロセスで解決方針を導く。このための、プロセスを確立しておく。 また、長期的な企業戦略を策定する会議を周期的に開催し、全社的な戦略のすり合わせを定期的に行っておく。
- 論争を喚起する企業文化を作る
- 目的、目標の定義に関してあいまいさを許容しておくと同時に、議論を提起しやすい文化を作っておく
- Job-1の活動とJob-2の活動との独立性を維持する
- Job-1、Job-2の双方の活動を保つために、Job-1とJob-2とで活動部隊を分離しておく。
投稿者 motlab : 2004年03月14日 22:46