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2004年09月21日
Sender ID騒動に見る知の共有プロセスの違い
先日のエントリでSender IDの有効性に関する議論を紹介しましたが、マイクロソフトの特許使用許諾ポリシーに対したオープンソースコミュニティの反発したことが原因でSender ID標準案は一旦否決になりました。 マイクロソフトの特許使用許諾ポリシー、オープンソースコミュニティが反対している理由などを調査しました。 この事件が、 産業界とオープンソースコミュニティとの知の共有に関する慣習の違いを象徴していることがわかってきました。
参考資料:
[1] COMPUTERWORLD 2004.9.14 IETF deals setback to Microsoft antispam effort
[2] eWeek 2004.9.17 Microsoft Patent Could Hamper E-Mail Authentication Group
[3] COMPUTER WORLD 2004.9.7 Open-source backers revolt against Microsoft antispam plan
[4] Microsoft Royalty-Free Sender ID for E-Mail Specification License Agreement
1. Sender ID標準化作業の状況
現在の状況については[1]をご覧ください。 Sender ID提案は一旦否決となり、修正作業中となっています。Microsoft特許に抵触しない方式を別オプションとして規定する方向で修正されるようです。 ただし、[2]で報告されている通り、Microsoft特許において権利主張されている範囲が広く、別オプションも抵触する可能性も懸念されています。
補足: Microsoftの特許はまだ未審査段階です。多くの特許出願は審査過程で権利範囲が限定されるように補正されます。 なので、現段階でMicrosoftの出願内容をベースに議論しても意味がないような気もします。
2. Sender ID否決の原因
[3]に記載されている通り、オープンソースコミュニティがMicrosoftの特許ライセンシングポリシーに反発したことが原因です。 特にサブライセンシングを認めないライセンシングポリシーが問題となりました。以下、[3]からの引用です。
Open-source software advocates are uncomfortable with a prohibition against transferring or "sublicensing" Sender ID licenses to others in the open-source community, and with a requirement that all licensees contact Microsoft directly to receive a copy of the license, Levine said.
より詳しくは、メジャーなオープンソースコミュニティである Apacheの反対意見をご覧ください。
サブライセンシングについて
サブライセンシングとはライセンスを受けた人が更に別の第3者(孫)にライセンシングすることを意味します。確かにマイクロソフトは、ライセンシングポリシー[4]において、サブライセンシングを禁止しています。ただし、なにがサブライセンシングに相当するかについて注意が必要です。 ライセンシングポリシーはサブライセンシングを禁止している一方で、ライセンシングを受けた業者が特許利用製品をエンドユーザに間接的に配布することは認めているからです。 つまり、ライセンシングポリシーに関するFAQ にも記載されている通り、あるオープンソースがマイクロソフト特許を利用したとしても、バイナリで提供される限りは、その配布業者もエンドユーザもマイクロソフトからライセンシングを受ける必要はないようです。
考察: Microsoftのライセンシングポリシー[4]の真意
基本的に、マイクロソフトは無償で特許使用を許諾する代わりに、相手の会社に対しても同等のクロスライセンシングを求めています。 無償 but クロスライセンシング必要のライセンスは、特定企業の特許によって技術の普及が阻まれるのを防ぐことができるため、産業界ではリーズナブルな措置として受容されていると思います。[4]においても、相手にクロスライセンシングを求める技術分野はSender IDに限定されており、不当にマイクロソフトの優先的地位を確保しようとするものではないように思えます。
サブライセンシング禁止の裏にオープンソースコミュニティの発展を阻害する意図があるのでしょうか? ここの部分は不明です。 ただ、オープンソースのような権利流通プロセスでは、結局どの企業がクロスライセンシングに合意しているのかを把握できないでしょう。 なので、"発明利用者は直接マイクロソフトにFAXで合意書を送るように"[4]というポリシーもリーズナブルなように思えます。 また、著作権ならともかく、特許権についてサブライセンシングという概念が一般的でないのかもしれません。 (近い概念として、MPEGなどが確立した特許プール機構を経由した特許許諾のしくみがありますが、IETFでは未だ特許プール機構は確立されていないと思います。)
私個人の感想としては、マイクロソフトの特許使用許諾ポリシーは技術の普及を促進することを目的としており、合理的であると思いました。 (ただし、権利に"personal"という修飾語がついていたりするので、詳細には不明な部分が残ってる) むしろ、オープンソースコミュニティと産業界との知の共有プロセスの違いに本質的原因があるようです。 企業としては、自社が共有に同意するだけでなく、自社が他社に訴えられるリスクも回避する必要があります。 オープンソースの権利管理プロセスが、企業のリスク管理の観点からは不十分であることに問題があるような気がします。
マイクロソフトとしては産業界からの正論としてこのポイントをついたのでしょう。 オープンソースコミュニティにとっては、一番言われたくない人に言われた、という感想なのかもしれません。
投稿者 motlab : 2004年09月21日 23:26
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コメント
ちょっと唸ってしまいました。
全文引用してしまいそうな勢いですが(笑)、ご紹介させてください。これは。
投稿者 SW : 2004年09月22日 00:49
SW様
コメントありがとうございます。
ご紹介いただき光栄です。
私もこの件ではいろいろと考えてしまいました。
オープンソースの商業利用には特許侵害リスクが潜在していることもニュースになっていますが、問題の根元は同じのような気がしています。
投稿者 Masa33 : 2004年09月22日 08:38